体のこと、あれこれ

ポンペ病

2018年5月2日

あなたは「糖尿病」ではなく、「糖原病」という病気を知っているだろうか?
糖原とはグリコーゲンのことで、私たちの体の中でエネルギーや、ホルモンを作り出す際に使われる。
そのグリコーゲンの分解がうまくいかず、肝臓や筋肉などにグリコーゲンが溜まり続ける病気が糖原病である。
グリコーゲンの分解にはいくつかの酵素が必要なのだが、どの酵素が先天的に欠損しているかで病型が七つに分類される。
そのうちのⅡ型に分類されるのがポンペ病である。
糖原病は肝臓か筋肉が主に侵さるため、大きく肝型、筋型に分けられる。
肝型では低血糖、肝機能障害、成人期に肝硬変、肝腫瘍を呈するものもある。
筋型では急性症状として横紋筋融解症、ミオグロビン尿症、腎不全、筋力低下などをきたす。
(横紋筋融解症は筋肉が溶けて筋肉内の成分が血中に流出する症状で、腎不全のもととなる。ミオグロビン尿症も筋肉が溶けることで筋組織内のミオグロビンが流出することで尿中に出る症状)
肝型、筋型のどちらか、あるいはその両方が合わさった形で発症する。
遺伝子疾患である。
一部のタイプには合併症として知的障害、てんかん、小奇形、黄疸、肝腫大、不整脈、突然死などがある。
ポンペ病は1932年にオランダの病理学者ポンペ氏によって報告されたことでこの名がついた。
「α1,4グリコシダーゼ」という酵素の欠損によって発症する。
発症年齢は幼児期から中年までと大きな幅があり、発症時期によりさらに乳児型、小児型、成人型と分類される。
このうち乳児型が最も重症度が高く、著明な心肥大、肝腫大、筋力低下、筋緊張低下を特徴する。
小児型は発症が乳児期以降で、進行は緩徐、病変は骨格筋に限られるという。
成人型も緩徐進行性の筋疾患となり、初発症状としては筋力低下、歩行障害として現れる。
有病率は4万人に1人とされ、日本では300~500人程度と推定されているが、これは一部に過ぎないとみられており、医学的スクリーニングを行うことで実数は上がるとだろうと予想されている。
筋力低下を伴う症状があるため、筋ジストロフィーなどの疾患との鑑別が必要になる。
治療としては、従来はリハビリや人工呼吸器の装着などの対症療法しかなく、特に乳児型の場合は9歳ごろまでの寿命とされていた時期もあったようだ。
しかし、現在は「マイオザイム」という特効薬の開発により欠損していた酵素の補充療法が確立され、近年最も劇的な治療上の進歩を遂げた疾患の一つとされるほどになった。
マイオザイムは2003年にアメリカで承認され、日本では2007年に承認を受けている。
マイオザイム開発にはアメリカのポンぺ病患者の父親が奔走しており、その物語が2010年に「小さな命が呼ぶとき」として映画化されている。
今なら以下のアドレスで視聴できるようなので、興味のある方は是非ご覧いただきたい。
http://video.fc2.com/content/201302176yaK6EVZ
オレゴン州に住むジョン・クラウニーは妻と三人の子供たちと暮らしていたが、二番目の長女メーガンと、三番目の次男パトリックがポンぺ病に侵されていた。
寿命が9歳と言われる中、8歳のメーガンの体調が悪化する。
もう後がないことと同時に、生きることを諦めていないメーガンの強さを思い知った時、ジョンはポンぺ病の第一人者であるロバート・ストーンヒル博士に会いに行く。
博士は偏屈者だったが、彼の研究は信頼に足るものだった。
ジョンはこれまでのキャリアを捨て、彼にすべてをかけることを決意し、博士とともに製薬会社を設立するのである。
製薬会社を設立したが、それで薬が完成したわけではない。
その後も大手の製薬会社ジェンザイム社との合弁や、吸収合併された先の研究者らとなかなかうまくやっていけないストーンヒル博士との確執など、それこそドラマチックな展開となっている。
こうしたことがあるからこそ、「事実は小説よりも奇なり」と言われるのだろう(どの程度の演出が入っているのかはわからないが)。
映画ではジョンの二人の子供たちが臨床試験を受けられることに決まったところで終了する。
「子供を何としても助ける」との情熱が結実したのである。
映画ではひとまずめでたしめでたしになった。
確かにマイオザイムの開発は不治の病と言われたポンぺ病の唯一の救いとなったことは事実であり、画期的なことだった。
しかし、マイオザイムは高額で治療コストが高いことや、隔週で通院し、1回4時間程度の点滴静注を障害継続しなければならないなどの問題点も残していた。
現在ジョンはAmicus社のCEOとして、次なる新薬の開発に取り組んでいるという。
彼の情熱は留まることを知らない。
ぜひ映画「小さな命が呼ぶとき」をご覧いただければと思う。
それにしても、以前本稿で取り上げた「副腎白質ジストロフィー」でも医学に関しては素人だった両親が執念の末、息子の病気に効くオイルを探し出すことができた。
https://ameblo.jp/helpjiritusinkei/entry-11363788771.html
その話も「ロレンツォのオイル」という映画になった。
陳腐でありきたりな表現だが、親の執念、愛情とはなんと凄まじいものだろうか。
本当に「奇跡」というものを引き起こすことができるようだ。
「奇跡」は滅多に起きないからこそ「奇跡」なのだが、多くの難病にその「奇跡」が起きてくれればいいのに。

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