体のこと、あれこれ

クライオセラピー

2018年10月26日

人の身体にはある刺激に対して反応し、防御しようとするシステムがある。
数ある治療法の中には、この防御反応を逆に利用して治療効果をあげるものがある。
それがクライオセラピー(寒冷療法)である。
極低温療法とも呼ばれている。
読んで字のごとく、極めて低い温度に触れることで引き起こされる生体反応を利用した治療法である。
もともとリハビリの分野で医学的に開発された技術だが、現在ではスポーツ、美容、育毛などの世界でも応用されており、いつの間にか「クライオセラピー」などとオシャレな呼称となってしまった。
実はこの技術、日本発症の技術とのこと。
冷凍療法研究所の山内寿馬(かずま)医師が1979年に開発し、1981年にリウマチ治療で成果を挙げたことで世界的に注目され、ドイツ、ポーランドなどヨーロッパを中心に研究が広がり始めたという。
その成果はリウマチをはじめとする関節炎、硬直性脊髄炎、アトピー性皮膚炎、さらには鬱や不安症などのメンタルヘルスにも実績を上げているとのこと。
最近では上述したように、脂質代謝の改善、無酸素運動の向上、スポーツ損傷に対する抗炎症作用、免疫機能増強など美容やスポーツ業界でも活用されている。
新たなアンチエイジング法としても注目されているとか。
もともとリハビリの分野では寒冷療法と言って、冷刺激を利用した治療法はあった。
しかしそれは0℃以上のものであって、効果自体も温熱療法とあまり違いがないため、それほど活用されてこなかった。
温かい温熱療法の方が気持ち良いし、患者さんが好むので、自然とあまり注目されなかったようである。
そんな中、さらに低い温度の冷気を短時間当てることでより大きな生体反応を引き出そうとする療法が次第に出てきた。
この極低温療法はリウマチに効くとされていたが、専門の機器が必要だったこともあり、自分が働いていた病院ではまだ導入されていなかった。
当時はまだこの療法自体、一般にもあまり知られておらず、あるリウマチ患者さんにこの療法のことを話した時に、
「リウマチは冷やすのがダメなんだ!」
とキレられたことがあった(笑)。
確かにその頃は一般的には「リウマチは冷やしてはいけない」のが常識だったのである。
この療法は-100℃以下という極低温の冷気に身体をさらし、知覚神経を刺激するものである。
知覚神経が冷刺激を受けることで一次的に血管は収縮するが、二次的に体が皮膚温度を上げようと血管は広がり、血流量が増流するのである。
その血流増加によって鎮痛効果、抗炎症作用などが得られるのである。
これがゆっくり体温が下がっていくのでは、身体は放熱を防ぐために血管を収縮させたままになってしまう。
極低温による血液増加量は平常の4~5倍ともいわれ、常温のところに戻っても血管は6~8時間もの間、血流促進状態を保つという。
ちなみにサウナに入った際の血液増加量は1.5倍なので、極低温療法の方がかなりの増加量と言える。
具体的な方法は、ホースで局部的に冷気を当てながら行うやり方や、全身的な反応を期待して冷凍室に入る大掛かりな方法などがある。
目的によって使い分けられるのである。
【 全身に対して行う方法 】
これは極低温治療室を使う方法がある。
まず、常温の部屋から-50℃の部屋に約30秒入る。
次に-130℃の極低温治療室に3分間入る。
「-50℃の部屋に30秒」の意味は体の反応として、効果がより一層増す方法なのか、単なる慣らしなのかはよく分からない。
ネット上ではF1レーサーのマック・ウェーバーという選手が事故後にこの治療を行い、予定よりも早く復帰できたことが記事になっていた。
現在ではカプセル型の機器もあり、ビューティーサロン等で使われているようである(こちらは-150~190℃ぐらい)。
ただし、2015年にはアメリカでサロンの従業員がおそらく仕事終わりに疲労回復目的でカプセルに入ったと思われるのだが、翌日出勤してきた同僚に死亡しているのが発見されるという事故が起きている。
発見時には身体はカチカチ状態になっていたという。
これは特殊で稀な例ではあるが、必ず誰かの監視下で行わないといけない危険な側面もあるということを認識しておかなければならない。
他にも五右衛門風呂のようなドラム缶タイプの機器もあり、これらはやはり全身的な免疫機能の向上や疲労回復、全身美容等を目的にしたものだろう。
日本ではあまり普及していないが、欧米諸国ではセレブやアスリートの間で人気だそうである。
ちなみに、六本木にある「カヴァロクリニック」では全身低温療法は1回23000円、局所低温療法は1回12000円で提供されているそうだ(冷え~、いやまちがった、ヒエ~)。
美容目的だと保険が効かないのでどうしても高額になりがちなのだろうが、やはりセレブしかその恩恵にあずかることは難しいようだ。
実際にかかる原価はどれほどのものかはわからないが…。
時間は男性が2分、女性が1分半だそうだ(苦笑)。
【 専用機器にて局部的に行う方法 】
今ではさまざまにメーカーが出来ているようである。
局所的なものなので、頭皮や美顔、ケガの治療などに使用されることが多いものと思われる。
なお、「凍結療法」「冷凍療法」「極低温療養法」など、名称は似ていても根本的に全く異なる療法や、同じ療法であるのに違う名称になっていたりと、結構紛らわしい。
施術希望をされるときは、内容をよく確認して選択されることをおすすめする。
「凍結療法」や「冷凍療法」はイボや癌組織を凍らせ、壊死させて取り除く治療法である。
一方理学療法士が行う寒冷療法の中にも「冷凍療法」と呼ばれているものがあるが、これは氷に塩を加え、より低温化させたものを直接肌に当てて生体反応を引き出すものである。
極低温療法との違いを持たせるために使われだした呼称かもしれないが非常に紛らわしい。
もう一つ注意しておかなければならないのは、このクライオセラピーの対象とならない禁忌疾患、禁忌事項があるということ。
禁忌となる疾患は循環器系の疾患、レイノー病、寒冷アレルギーなどである。
感覚障害がある部位や心臓・胸部に対しては直接吹きかけてはならない。
当然のことながら寒冷に対して拒否的な人はそれだけでストレスになってしまうので避けるべきだろう。
日本で生まれた技術なのに、日本では広まらず、今、逆輸入的に海外から「クライオセラピー」として入ってきたなどと言うのは、いかにも日本らしいという気がする。
日本でもっと広まり、発展していれば、もっと安価に気軽に行うことができる健康法になっていたかもしれないのにもったいない!

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