体のこと、あれこれ

TMS(緊張性筋炎症候群)

2019年7月23日

「腰痛は怒りである」と言われて、あなたは「なるほど!」と納得できるだろうか。

ニューヨーク大学のジョン・サーノ教授が提唱するTMS理論では、根治できない慢性腰痛、坐骨神経痛、肩こり、そのほか四肢の痛みなどは「怒り」が原因であるという。

人間が抱える諸々の感情の中で、「怒り」は社会的に最も敵視され、受け入れられがたい感情である。

それゆえ人はなるべく「怒り」を表に出さず、日々の暮らしの中で抑制することを強いられる。

仕事や日常生活の中でカチンとくること、イライラすること、すべて「怒り」である。

その溜め込まれた怒りは上手に抑制しきれていればいいが、抑制しきれなくなると自律神経に影響を及ぼし始める。

自律神経の異常は局所的な血管収縮を引き起こす。

患部では血液循環が悪くなることで

①化学的老廃物の蓄積

②筋肉痙攣

③神経障害

が起きる。

つまり、人が心理的防衛機制を働かせて体に痛みを引き起こし、怒りに対処しているのが慢性腰痛の本質であるというのである。

TMSとは「Tension Myositis Syndrome」の略で、「緊張性筋炎症候群」と訳される。
「緊張」とは、言い換えれば「心の緊張」だという。

「筋炎」とは必ずしも炎症症状があるという意味ではなく、筋肉内に「何らかの生理的変化が生じている」という意味であり、全体を分かりやすく言い換えると、

TMSとは

「心の緊張がもたらす痛みを伴う筋肉における何らかの生理的変化」

の症状を指している。
怒りだけでなく、「抑制された感情」の蓄積は自律神経の働きに異常をもたらす。

一般的には胃や腸など消化器系統にその影響は現れやすいが、筋肉、腱・靭帯、神経にも現れたものがTMSと呼ばれるものである。

人体を経絡の流れで捉える東洋医学からすると、極めてまっとうで人体の本質に近づいた理論だと思う。
TMS理論の治療プログラムは、

「講義討論会」

「グループ・ミーティング」

「身体への治療をやめる」

「毎日の注意」

「痛みを叱る」

「活動を再開する」

「ストレス・リストの作成」

「瞑想と熟考」

「読書療法」

「心理療法」

などから構成されているそうだ。
項目は多いが要は

①「呪い」を解くこと

②防衛機制を解除すること

の二つに集約されるとのこと。

ここでいう「呪い」とは、腰痛は「老化現象である」「椎間板の異常」「過激な運動」「運動不足」「重いものを持つから」「姿勢の悪さ」「怪我の後遺症」「ハイヒールを履くから」等々、これまで腰痛原因とされてきた誤った情報だという。

これができないと心に目を向けることができないのだと。

逆にその呪いが解けると治療の半分以上は達成できたようなものなのだそうだ。

だから、ジョン・サーノ氏の著書を読むだけで呪縛から解放され、腰痛が改善する人も多いのだという。

著書は以下で確認できる。
http://www.tms-japan.org/bibliotherapy.html
TMS理論では肉体的治療は行わないことを提唱されている。

それは患者が一度はTMS理論に納得しても、肉体的治療を受けていると、根本的要因である心理的な原因であることを疑い、再び肉体的な治療に固執するようになるからだとか。

しかし自分が思うに、それは施術者側がTMS理論を認識し、受け入れるかどうかで変わってくることと思う。

少なくとも、心と体は一体のものと学んできた者にとっては矛盾する理論ではないし、問題の本質を患者に絶えず意識させつつ、肉体的治療を同時に行うことでより早期の改善が図られることだろう。

いずれにしろ、身体に生理的変化が生じていることは確かなのだから、

「労働や姿勢など物理的要因を全否定することなく、心理的要因にも大いに目を向け防衛機制を外していく」

そんなスタイルの方が、治療者も患者も心置きなく治療に取り組めると思う。
ちなみに、TMSによる腰痛はあくまでも心理的要因に起因する腰痛の場合にのみ有効であるので、ぎっくり腰などの急性腰痛や悪性腫瘍などによる腰痛など、器質的な要因による腰痛との鑑別が必要である。

イメージとしては治療を受けるとスッキリするが、少しすると再び症状が現れるような慢性腰痛が対象となるという。

しかし鑑別は必要なので、整形などを受診して器質的な問題がないことを確認した上で行うことが推奨されている。

TMS理論に興味がある方は下記のサイトをご覧いただきたい。
http://www.tms-japan.org/index.html
心理的問題が体に影響を与えるという根本的な考え方については極めて納得できる。

何ら異論もない。

しかし、「ぎっくり腰などの急性腰痛や悪性腫瘍」などの器質的な問題がある場合を除いてはいるものの、それ以外の物理的要因を否定する内容にはいくつかの疑問を感じる。

治療対象を「根治できない慢性腰痛、坐骨神経痛、肩こり、そのほか四肢の痛みなど」というが、何を持って「根治できない痛み」とするのか。

ここに列挙した疾患はいずれも治療者側の力量によっても治療効果が左右されるものばかりである。

何年もの過重労働が原因でパンパンに張った腰で、長年腰痛に悩まされているという人もいる。

このケースなどは1~2回の治療で完治は難しいが、地道にほぐしていくことですっかり改善するケースもある。

この場合は「器質的に問題のあるケース」になるのだろうか。

もし、それすらも心理的要因からくる痛みだとするならば、どこにその根拠があるのだろうか。

しかし、上記で説明されているように、TMSにも器質的変化が生じている。

結局はその器質的変化の改善を図る試みからとりあえず始まってしまうだろう。

つまり、「根治できない痛み」といっても少々定義が曖昧で、中には本当に器質的要因の人も含まれているのではないかということである。

明らかに器質的問題を抱えたケースだけを除き、それ以外をすべて心理的要因による腰痛とするのは少々乱暴すぎるように思う。

また、TMS理論が掲げる「呪いを解くこと」「防衛機制の解除」ができたとして、それは一度やればあとは痛みを引き起こさないのだろうか。

もしそうなら「痛みは根治された」として、諸手を挙げて降参しよう。

しかし、その後の患者が常にその二つのことを意識し続けなければならないのだとしたら、それは治療し続けていることにはならないのだろうか。

まあ、痛みを感じることもなく、治療のコストもかからないのだとしたら、これは屁理屈の論理でしかないけれども…(笑)。
患者さんの腰痛が仮に心理的要因からくるものだとしても、治療によって緊張が解きほぐされることで気持ちの平安が、たとえ一時的であっても訪れることを経験上知っている。

やはり心と体は一体のものなのだ。

要は、治療者と患者の両者が心理的要因についても深く理解し合い、器質的問題を取り除きながら心理的要因にも目を向け、同時進行で治療を行うことが患者さんにとって最も最短で改善に到達する道ではないだろうか。

肉体的治療を同時に行っていると、TMS理論を疑い、肉体的治療に再び固執するようになるというが、それも一つのプロセスだと考えればどうだろう。

そこで「肉体的治療だけでは治らない」ことが理解できれば、前よりもTMS理論を深く理解することができるだろう。

また、治療プログラムには多くの項目があるが、呪いから解け、防衛機構を解除するまではどれほどの期間が必要なのだろうか。

その時が来るまで痛みを感じ続けなければならないのだろうか。

だとしたら、肉体的治療による一時的な開放も意味のあることではないだろうか。

それが自分の感想である。

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