体のこと、あれこれ

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  • 2019年12月11日

    2017年7月、聖路加国際病院名誉院長で著名な日野原重明医師が亡くなられた。
    言わずと知れた、105歳まで現役の医師を続けられてきた方である。
    日野原先生がどれほどすごい方だったのかはウィキペディアの経歴を見るだけでも分かるが、下記のサイトではいくつかのエピソードについて簡潔にまとめられており、どれほど日本の医療に貢献されてきたのかがより良く分かる。
    ちなみに、「生活習慣病」という言葉を作られたり、予防医学への貢献や、日本初の「ホスピス専門病院」を設立されたのも先生だそうだ。
    https://rinrinshappy.com/archives/11536
    そんな先生が105歳まで現役の医師として働いてこられたほど健康でいられたのには先生独自の三つの健康法があったという。
    一つは小食。
    先生は一日1300キロカロリーを目安にした食事を長年続けてこられたそうだ。
    朝はオレンジジュースとスプーン一杯のオリーブオイルのみ。
    昼は牛乳とビスケット数枚。
    夕食に初めて茶碗半分のご飯と野菜たっぷりのおかず、それに肉または魚という内容だそうだ。
    少食については「朝だけ断食」という健康法があり、「空腹状態が長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする」と言われていて、老化予防になるそうなのでこれは極めて納得できる。
    ちなみに、少し話はそれるが一般に「体温が高いほうが健康に良い」と言われており、自分も体温が高いほうが代謝が高く、免疫機能もよく働きそうなのでそう信じていた。
    しかし、「体温が低い人の方が結果的に長生きしている」との結果がビッグデータを調べてみてわかったそうである。
    若いうちは体が作られていく段階なので代謝が活発でなければならないが、年齢が上がるにつれて基礎代謝は落ちていくので、むやみに代謝を上げようとしても年老いていく細胞には逆に負担がかかるということだろうか。
    先生の基礎体温がどれくらいのものかは分からないけれども、食事の摂取量は極めて少なく、高い体温を維持されていたとは思われない。
    その摂取カロリーでも現役の医師を続けられ、執筆活動なども行っておられたわけだから、
    「体温が高いほうが健康に良い」
    という単純化するのではなく、
    「〇〇才の人が、〇〇キロカロリーの摂取でも、体温が〇〇度維持できていると健康的」
    と体温と健康の関係については、年齢とエネルギー摂取量とを加味した上で、年齢に応じた適切な体温があるのかもしれない。
    話を戻そう。
    先生の二つ目の健康法はやはり運動である。
    とにかくよく歩くことを推奨されている。
    運動機能を一定以上に保つことは怪我をしにくい体づくりになる。
    また、自分のようなメタボ人間には基礎代謝を上げるという意味もある。
    ある程度高齢になれば「代謝を上げる」というより、「代謝を今よりも下げない」という意味で継続した運動は必要だろう。
    加えて、これも昨年12月に当ブログでも取り上げたが(
    https://ameblo.jp/helpjiritusinkei/entry-12422799283.html?frm=theme
    )、最近では、筋肉は単なる運動器官ではなく、「内分泌器官」でもあり、抗老化のための様々な作用をもたらす物質を出していることが分かっている。
    そういう意味でもこれもまた納得である。
    自分が驚いたのは三つ目の睡眠である。
    先生は「うつぶせ寝」を推奨しておられる。
    その理由は「動物は皆うつぶせ寝であり、動物に不眠症がないのはそれが本来の自然な寝方だから」ということのようだ。
    う~ん、これはどうなのだろう。
    犬や馬など骨格の構造上、そもそも仰向けがしにくいではないか。
    危険を素早く察知して逃げるにはうつぶせ寝の方が圧倒的に有利だろう。
    その証拠に、骨格の緩い猫は、危険を察知する必要のないほど極端にリラックスすると仰向けになって寝るものもいる。
    動物がうつぶせ寝をするのは骨格や環境的にそうせざるを得なかったからであり、決して健康を考えて選択したわけではないのではないだろうか。
    そんな事を考えると、にわかには納得できなかった。
    しかし、考えてみると疲れた時などは仰向けで寝るよりも横向きで寝たほうが楽な感じがする。
    もっと極度に疲労した時などはうつ伏せに倒れ込んでしまう。
    また、喘息の人などは確かに前かがみになって寝る方が楽になる。
    これは自然とエネルギー効率の良い姿勢を選んでいるのか、とも思ってしまう。
    そこで調べてみると、「うつぶせ寝健康法」なるものがしっかりあった。
    その内容を見てみよう。
    うつぶせ寝のメリット
    〇気道がしっかり確保され、呼吸しやすい
    仰向けだと重力で舌が沈み込み気道を塞ぎがちになるので、いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩んでおられる方は最適となる。
    〇腰痛緩和
    もちろん一口に腰痛といっても人によって腰の状態は違うので、うつ伏せだと帰って腰が辛いという方はお腹や胸の下に柔らかい布団とかタオルを入れる工夫が必要である。
    確かに、仰向けは背骨の周囲にある血管や神経が体重によって圧迫されており、必ずしも腰に優しい寝姿というわけではない。
    事実、腰痛がひどい場合は圧倒的に横向きの方が楽であることは周知のとおりである。
    例えば以前の自分もそうであったが、慢性的に腰が重苦しい状態が長い間続いていて、夜布団に入って横になると腰が苦しく、落ち着くまでけっこう時間がかかることがあった。
    また、逆に朝方になるとかえって腰が辛くなるという、いわゆる「寝腰」タイプの人もいる。
    そういった慢性腰痛の人にありがちなのは、その状態が「当たり前」になりすぎて、あまり本気で治そうと思わなくなること。
    腰痛がなくなると一層寝ることが楽しく、普段の動きもより軽やかになり、快適に過ごすことができるようになる。
    もし、そんな腰痛が改善につながるのなら、うつぶせ寝を実践してみるのも悪くはない。
    〇痰が出やすい、胃腸の改善
    喘息発作のある方などは上半身を起こした状態の方が寝やすかったりもするが、喘息ではないけれどもたんが絡みやすいという人には有効なのかもしれない。
    また、腹部への適度な圧迫が胃腸の改善にもつながるとうつぶせ寝健康法の提唱者は言っている。
    正しい体位
    最も大事なのは、呼吸がスムーズで心地よい体勢づくりのようである。
    顔は左右どちらか楽な方へ向ける。
    多くの人は自分で気づかぬうちに多少なりとも歪んでいることが多いので、左右差を感じると思う。
    感じないのは左右がきちんと整っていると思われる。
    もし、顔を右に向けたら右上下肢を外側に開き、右肘、右膝を曲げる。
    開き具合、曲げ具合も自分が楽なポジションで。完全にうつぶせ寝でなくとも、抱き枕などを使って半うつぶせ寝でも良いそうである。
    枕の選び方、使い方
    出来るだけ柔らかく、大きいものがいいそうだ。
    あまり高さがないものが良いとのこと。
    要は首がつらくなっては意味がないので、柔らかくとも枕があるとかえってつらいと感じる場合は枕は無くとも良いと。
    ただし、顔の擦れやよだれ防止のためにタオルぐらいは敷いた方がいいかも。
    首が一方向ばかりだと辛くなるので、時々変えるようになると思われるが、その際は当然ながら、顔が向いた方の上下肢も曲げるようにすると頚は楽になる顔が真下を向いて寝るための円座型の枕もある。
    呼吸がこもりやすいので、顎に当たる部分が開いているタイプがおすすめである。
    うつぶせ寝を控えるべきタイプ
    〇寝返りのできない赤ちゃん
    〇骨粗しょう症などで骨がもろくなっている方
    〇在宅介護でケアをされている高齢者の方
    以上の方々はそれぞれリスクがあるので、やらない方がいいようである。
    中高年にお勧めのうつぶせ寝健康法
    子どもの頃は寝ている間も体動激しく、背中への圧迫など問題にもならないと思われるが、中高年になってくると、あおむけ寝が習慣化されてくる分、背中への圧迫が起きやすくなり、睡眠の障害が起きやすくなるとのこと。
    日野原先生もうつぶせになって寝ると、スーっと入眠できるとおっしゃっておられる。
    余分な力が入らないということなのだろう。
    ちなみに、自分は以前から寝たきりの人の治療に携わる時、なぜこんなにも手足が硬くなるのかと考えていた。
    それは単に体を動かさないからという理由もあるだろう。
    病気によっては、それ自体が硬直を促すこともある。
    しかし、それだけでなく、背中が常に床に触れていることで、その接触刺激によって緊張が促されているのではないかと考えている。
    また、元々多少なりとも腰痛を抱えている人はそもそも仰臥位が上述のように得意ではない。
    だから、寝ていること自体が辛くなり、それによって緊張が生じ、その緊張が徐々に波及して手足も硬直しやすくなっていくのかもしれないとも感じている。
    あくまでも個人的な意見だが、もしそうなら定時的な体位変換は褥瘡予防だけでなく、硬直予防の観点からも必要な措置だといえる。
    いつの間にか習慣化されていたあおむけ寝。
    自分自身は今現在、これで特に不便は感じていないので、すぐにうつぶせ寝に変えてみようとは思えないのだが、
    熟睡感があまりない方は、ちょっと常識を変えて、トライしてみるのもいいかもしれない。
  • 2019年11月26日

    あなたは映画「エクソシスト」を覚えておいでだろうか。
    悪魔に魅入られてしまった人から悪魔祓いを行う人のことをエクソシストと呼ぶのだが、その悪魔に魅入られた人間に起こる様々な症状が実はこの疾患によるものではないかと言われている。
    もしそれが本当ならば、また一つ心霊現象が科学的に説明のつくことになるわけだが、まるで悪魔に魅入られたかと思える症状を現す疾患とはどんなものだろうか。
    脳神経の神経伝達物質の一つであるグルタミン酸を受けて刺激を伝える受容体としてNMDA型受容体というものがある。
    この受容体を攻撃する抗体が何らかの原因によって自分の体の中で作られてしまい、脳の炎症を起こすと同時に脳内の情報伝達を狂わすのが本疾患である。
    ちょっと小難しいが、要は脳の中のNMDA型受容体というところが、自分の中で生み出してしまった抗体から攻撃を受け、脳の炎症を起こし、脳内の情報伝達を狂わせるという疾患である。
    本来抗体とは外部からの異物を攻撃し、身を守るための役割、つまり免疫機能を果たすものだが、その抗体が攻撃するはずのない自らの身体を攻撃するのである。
    その発見は極めて新しく、2007年にペンシルバニア大学のDalmau教授らによって提唱されたばかりである。
    その発生率はまだ不明であるが、未知の病因とされている脳炎の中に1%程度含まれるのではと推定されている。
    100万人に0.33人という説もある。
    日本では若い女性を中心に毎年1000人程度が発症しているとも言われている。
    この疾患概念が確立される2007年までに日本において「若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎」として報告された一群の多くは本疾患と同一のものだったと判明しているとのこと。
    ランセットという医学雑誌に掲載されている100例を検討した記事によると、本疾患の100例中91例が女性で、平均年齢は23歳であったという。
    気になる症状であるが、下記の点が挙げられている。
    1. 前駆症状として非特異的なウィルス様症状(発熱・頭痛・倦怠感など)
    2. 精神障害、統合失調症に似た症状(幻覚、自殺念慮、無気力、無感動、抑うつ)
    3. 記憶障害
    4. ジスキネジア(筋肉の不随意運動)が特に口腔顔面に現れる(舌の出し入れ、口もごもごなど)
    5. 意識障害
    6. 呼吸障害
    7. 自律神経障害
    おそらく2.4.5.あたりが「悪魔憑き」のような見た目の異様さや言動となって現れるのだろう。
    ニューヨークポスト紙の記者であるスザンナ・キャラハンさんは24歳であった2009年2月のある日、何の前触れもなくいるはずのないトコジラミへの恐怖にさいなまれる感覚を覚えた。
    彼女は高い金額を払って自宅を清掃してもらったがそれは無意味だった。
    その妄想のような症状が本疾患の始まりだった。
    その後、理由もなく仕事への意欲が薄れ、ミスが続いた。
    取材相手へ異常な態度をとるようになった。
    オフィスでいきなり感情が崩壊し、ぽろぽろ泣き出すかと思えば幸福の絶頂のようにふるまい周囲を不安にさせた。
    吐き気に襲われたり、奇声を上げたりと理解不能な振る舞いは続き、身体も、感情も、記憶も、アイデンティティそのものが制御不能となった。
    病院で検査を受けるもすべての結果が「異状なし」。
    しかし症状はどんどん悪化し、スザンナさんは自分の名前を言うことすらままならない状態となった。
    医師たちもあせるばかりだったが、4月のある日、ようやく病気を特定することができた。
    普段は細菌やウィルスから身体を守るはずの抗体が間違って自分の脳を攻撃してしまう病気だったのである。
    その後、彼女は周囲に支えられ、励まされながら治療とリハビリを乗り越え、約7か月間の闘病生活を経て、ニューヨークポストへ復帰することができた。
    577名の患者を対象とした大規模な研究では、394名(69%)が24ヶ月で良好な状態となり、30名(5%)が死亡、残り153名(26%)が軽度~重度の障害が残ったという。
    なぜ女性が多いのかはまだ分かっていない。
    前述のランセットの調査では98名に腫瘍学的スクリーニングを行うと58名に腫瘍があり、主に卵巣奇形腫であったという。
    奇形腫と呼ばれるものは内胚葉・中胚葉・外胚葉、体を構成する要素すべての由来を受けている。この奇形腫をやっつけようと抗体が生まれるわけだが、その奇形腫に脳組織が含まれた時、その脳組織に対する抗体も生じてしまい、それが自分の脳をも攻撃するのではないかと考えられている。
    スザンナさんは復帰後、自分の経験を記事にした。
    すると反響は大きく、誤診などで正しく治療を受けられていない現実が浮き彫りになってきた。
    女性だからという理由で「ヒステリー」と片付けられてしまった人もいるという。
    そこで彼女は病気の認知を広げるために「Brain on Fire(日本語翻訳版「脳に住む魔物」)」を出版し、2017年末には映画も公開されることとなった。
    実は彼女をモデルにした映画「彼女が目覚めるその日まで」が2018年に全国で上映されたのだが、残念ながら岩手では上映されなかった。
    また、同じく「抗NMDA受容体脳炎」の患者をモデルにした映画として「8年越しの花嫁」というものもあるようだ。
    興味のある方はぜひ映画や著書をお読みいただきたい。
    それにしても、自分を守るためのしくみが自分を攻撃する自己免疫疾患とは、なんと厄介な病気だろうか。
    そして、実態がわからないときは心霊現象と見られていたものも、解明されてみれば病の一つであると教えてくれた印象深い疾患である。

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