体のこと、あれこれ

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  • 2018年3月9日

    これまで血糖値が下がる低血糖症といえば、糖尿病や肝がん・胃切除などの一部の特異なケースでのみ起きる症状と考えられてきた。
    だが、以外にも広く存在しているかもしれないと言われ始めている。
    しかも、無気力、倦怠感、発汗・動悸などの自律神経症状、異常行動、過食症などといった、ともすれば精神疾患を疑われるような症状を呈するために、低血糖症と認知されずに精神疾患としての治療を受けているケースもあるのではないかというのである。
    登校拒否、パニック障害、自律神経失調症、過食症などに悩まれておられる方は一度低血糖症も疑ってみることもいいかもしれない。
    まずは、血糖値の正常値についてだが、糖尿病の検査項目で見てみよう。
    糖尿病の検査では
    ①9時間にわたって絶食したのちに計測する空腹時血糖値
    ②75gのブドウ糖を摂取後の2時間値(75OGTT2時間値
    ③糖分摂取にかかわらず測る随時血糖値
    ④ブドウ糖と結合したタンパク質であるHbA1c
    の四項目を測る。
    HbA1cが高いと過去2か月ほどは血糖値が高かったことを意味する。
    そのため、例えば検査時の空腹時血糖値が低くても、「たまたま検査時に低かっただけ」ということがわかるのである。

     

    ①空腹時

    血糖値

    ②75OGTT

    2時間値

    ③随時

    血糖値

    ④HbA1c
    80~110mg/DL 80~140

    mg/DL

    6.2%未満
    110~130

    mg/DL

    140~180mg/DL 6.2~6.9 %
    130~160

    mg/DL

    180~220mg/DL 6.9~7.4

    %(不十分)7.4~8.4

    %(不良)

    不可 160

    mg/DL~

    220

    mg/DL~

    8.4%~
    糖尿病疑い 126

    mg/DL~

    200

    mg/DL~

    200

    mg/DL

    6.5%~

    以上の検査で糖尿病が疑われる数値をチェックし、①②③のいずれか一つ以上と④が異常値を示した時に糖尿病という診断がつくこととなる(ほかにも診断パターンはある)。
    そして、今回の「低血糖症」を診断するには「75OGTT」を5時間にわたって行うという。
    前日の晩から12時間以上の絶食後、75gのブドウ糖の摂取前と摂取後5時間の中で合計9回採血し、血糖値の変化を見るという。
    加えて、インスリン値や体温なども計測するようだが、より詳しい診断基準を知りたい方は下記のサイトをご覧いただきたい。
    http://eat-hygeia.jp/contents/causes/13.html

     

     

     

    正常な人はブドウ糖摂取後、30~60分で血糖値が摂取前の1.5倍まで上がる。
    その後緩やかに下がり始め、3~4時間にはブドウ糖摂取前の数値にもどる。
    ざっと言えば100mg/DLぐらいから150ぐらいまで上がり、3~4時間で100ぐらいまで戻るのである。
    正常な人の場合はそんな血糖値が70mg/DLを下回るあたりから下記のごとく低血糖症状が現れ始める。
    70mg/DL~ 空腹感、あくび、吐き気
    50mg/DL~ 無気力、倦怠感、計算力減退、頭痛、目のかすみ
    40mg/DL~ 冷や汗、動悸(頻脈)、震え、顔面蒼白、紅潮、傾眠
    30mg/DL~ 意識消失、異常行動
    20mg/DL~ けいれん、昏睡

     

     

    そんな低血糖症状が日常生活の中で、どのように現れるかというと・・・
    ・空腹になると気が遠くなったり、意識を失うことがある。
    ・空腹になると手足が震える、気持ち悪くなる、冷や汗が出る
    ・尿意を我慢すると意識がなくなる
    ・朝ベッドから起きることが非常に困難
    ・体のだるさと眠気でほぼ寝ている状態が続いており、何もする気が起きない
    ・夜中に何度でも目が覚める
    それでも、それらの症状と空腹との関連が分かれば対処もしやすいだろうが、中には「反応性低血糖症」というやっかいなものがある。
    これは糖尿病を患っていないにもかかわらず、ブドウ糖摂取後30分で血糖値が正常値の2倍の200mg/DLほどまで跳ね上がり、その後2時間で50~60mg/DLまで急激に下がるというような、血糖値の乱高下が起きるケースである。
    食後に急激な血糖値の上昇があり、それに反応してインスリンが過剰に分泌され、今度は一気に血糖値が下がってしまうのだ。
    このようなケースでは急に不安感・イライラ感が生じるとか、場合によっては幻覚や幻聴などの症状を呈することもあり、統合失調症やパニック障害などの診断を受け、治療されていることも多いという。
    その場合、いくら精神薬を処方されても原因が異なるわけだから、治療効果があまりでないこともあるという。
    外出時にこのような症状が現れるために定職に就くことも困難になるケースもあるとのこと。

     
    そして、さらに厄介な低血糖症が「無反応性低血糖症」というものである。
    これはブドウ糖を摂取しても血糖値がほとんど上がらないケースなのだそうだ。
    医者によっては腸での吸収がうまく行われていないのではないかと考える方もいて、そのためなのか疲労感や抑うつ感を強く訴える患者さんが多いという。
    そして慢性疲労症候群やうつ病などと診断されることがあるのだそうだ。
    強い疲労感を訴える一方で、交感神経の働きも検査すると緊張状態にあるそうで、病態としては複雑で、低血糖症の中でも重症に分類されるという。
    なんとも厄介な病態である。

     
    「反応性低血糖」でもイライラ感という症状があり、「無反応性低血糖」でも交感神経の緊張がみられる。
    これらは身体が血糖値を上げようと分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンのせいである。

     

    低血糖時に副腎髄質ホルモンの変動によって生じる精神症状
    アドレナリン イライラ、キレる、怒り、憎しみ、敵意、暴力、完璧主義、異常なこだわり、不眠など
    ノルアドレナリン 不安、うつ、落ち込み、恐怖感、焦燥感、自殺観念、強迫観念、悪夢、不眠、パニック障害など

     

    俗に腹が減ると怒りっぽくなる人というのはこのためだと考えられるが、今はやりの「キレる若者・老人」などは低血糖症が原因の可能性もあるのかもしれない。
    脳は体全体の血糖の実に20~30%も消費するため、低血糖状態では判断力の低下や上述のように計算能力の低下も生じる。
    幻聴や幻覚などの症状なども現れれば、特に高齢者の場合認知症が疑われることにもなる。
    また、摂食障害にもこの低血糖症の関連が疑われている。
    こうしてみてくると、糖尿病や一部の特異なケースの低血糖症以外の低血糖症というのは医者の中でもまだあまり認知されていないそうなのだが、隠れ低血糖症が実は本当に多いのではないかと疑われてくる。
    では、このような低血糖症はなぜ起きるのだろうか。

     
    そもそも低血糖症になりやすいのは貧血体質、アレルギー体質、先天的糖尿病体質、すい臓機能障害、胃下垂、胃酸過多症、自律神経失調症、甲状腺機能障害などをお持ちの方だと言われている。
    原因は不規則な食生活や糖質の過剰摂取による食習慣が原因になっていると考えられている。
    また、カフェイン・タバコ・アルコールの過剰摂取、ビタミン・ミネラルの摂取不足、ストレス、激しい運動も要因の一つと考えられている。
    それらの中でも特に精白された砂糖の過剰摂取はビタミンやミネラルが不足しがちとなり、より発症の原因となりやすくなるという。
    以下の「糖質中毒」に当てはまりそうな方は(実は自分もその一人)、ぜひともご注意を!
    ① 食事に白いご飯がほしくなる
    ② イライラするとつい甘いものを食べてしまう
    ③ カレーライスやオムライス、パン、丼もの、うどん、が大好きである。
    ④ ソースやケチャップをたっぷりかけて食べるのが好きである。
    ⑤ 食後にウトウトと眠くなりやすい。

     

     

     

    自分などは①③はズバリその通りだし、②も時々感じる。
    ⑤も最近時々感じる。
    ひえェおそろしや~。
    上記に当てはまる方はさらに下記の症状にも注意が必要だそうだ。
    ・冷え性、便秘、偏頭痛、耳鳴り、肩こり
    ・貧血気味、めまいが起きやすい
    ・顔や足のむくみがひどい
    ・すぐイラつく、緊張しやすい
    ・集中力がない、思考が続かない
    ・常に不安で落ち着かない
    ・忘れ物・物忘れが多い
    もちろん、それぞれの症状単体では様々な原因が考えられるが、合致する症状が多ければ多いほど糖質のとりすぎを疑うべきだろう。
    それと、糖質は何も炭水化物に限らず、菓子類もそうだし、清涼飲料水などの人工甘味料は消化の過程を経ずにダイレクトに吸収されるため一気に血糖値を上げるので、血糖値の乱高下を招きやすいという。
    最近、人気絶頂の出川さんはコーラが何よりも好きなそうだから、本当に大丈夫かなと思ってしまう。

     

     

     

    糖質中毒を和らげる改善策としては、やはり第一に糖質制限である。
    少なくとも菓子類や清涼飲料水はなるべく避け、主食もご飯は玄米や雑穀米に変えるとか、パンならば全粒粉のものに変える方がいい。
    副食との比率を変えて主食を少なめ、副食を多めにする方がいいようだ。
    また、副食においても様々なビタミン、ミネラルを摂取できる内容に工夫し、肉、魚介類、卵、乳製品、野菜、海藻、きのこ類などを多くとることが大切である。
    玉ねぎ、オクラ、アロエ、桑の葉茶などは推奨されている。
    くだものならリンゴは血糖値の上昇が緩やかで、噛む力もいるので、満足感も得られやすいとされている。
    東洋医学でも南方の果物が甘いのは体を冷やすためと考えられており、冷えを抱えている人には北方の果物であるりんごがよく推奨されている。
    自分も基本的には玄米食ではあるが、全体的に見直し、ちょっと変えていきたいと思う。

     

     

     

    不幸にも低血糖症となってしまわれた方は急激な血糖値を上げないために、上記のような食事内容に変えることはもちろんのこと、食べる順番も野菜やタンパク質から始め、炭水化物へと移るとか、食事間隔を狭めるとかの工夫が必要になる。
    チョコや飴などは急激な血糖値上昇を招くのでナッツ類やヨーグルトなどが推奨されている。
    しかし、通常の仕事についている方は「おやつを常に食べながら仕事をしている」と受け取られかねず、なかなか難しいかもしれない。
    周囲の理解を得ることが必要となるだろう。

     
    最後に、こんなタイプの低血糖症を紹介したい。
    それは「無自覚性低血糖」である。
    中度から重度の低血糖を繰り返すと、低血糖を認識する血糖の閾値が低下するため、空腹感や動悸などの警告症状が出ずに、いきなり意識障害のような中枢神経症状が現れるケースである。
    このような場合は自分で一日のうちに何度も血糖測定を行う必要がある。
    意識障害が車の運転途中に起きれば事故の原因にもなる。
    実際、平成14年の道路交通法で免許が交付されない、あるいは保留される対象者に定められた。
    交付される場合でも適性検査に合格しなければならない。
    ここまでくると、自分だけの問題ではない。

     
    ある病院では精神症状が疑われるケースにOGTTを施行し、低血糖症が判明した方が何例もいたという。
    上述したように隠れ低血糖症の患者さんは本当に多いのかもしれない。
    症状がそれほど激しくなくとも、原因不明の倦怠感など一般的によく聞かれる症状である。
    もしも思い当たるという方は食生活の改善を試みてはいかがだろうか。

     

     

     

     

  • 2018年2月14日

    これはある個人の能力というより、ある特殊な能力を身につけた個人の細胞の話である。
    私たちの体は約60兆個もの細胞から構成されている。
    約260種類の様々な細胞があり、寿命も24時間から死ぬまでのものといろいろである。
    寿命の最短は胃や腸の消化管の上皮細胞で、およそ24時間で死滅するそうだ。
    最長は心筋や中枢神経細胞で、これらは細胞分裂をしないので、その寿命はというと死ぬまでということになる。
    もっとも、最近の再生医学の研究から、二度と細胞分裂しないとされていた脳の神経細胞でも再生能力を持つことが分かってきているが、腸管の上皮細胞のように役割をすぐに次世代の細胞に託すようなスピード感のあるものではない。
    そのほか、血液中の赤血球なら約120日、骨細胞なら数年から10数年と本当に様々である。
    ヒトの体は死滅した数の細胞分だけ再生させてその体を維持しているが、昨日のあなたと今日のあなたは決して同じ人間ではないということだ。
    そんな細胞を様々な研究に役立てようと、細胞を培養する技術の確立に19世紀から取り組まれてきた。
    そして1907年にカエルの神経細胞の培養に成功し、そこからマウスなどの哺乳類を始め、様々な動物の細胞が培養されるようになった。
    しかし、ヒト由来の細胞を安定的に数週間培養し続けることはその後50年たっても誰も成功には至らなかったのである。
    そんな中の1951年2月8日、ジョージ・ゲイは勤務していたジョンズ・ホプキンス病院で小さな癌の病理切片を入手した。
    そして、その切片から得た細胞の培養に初めて成功することができたのである。
    その病理切片こそが後にヒーラ細胞(HeLa細胞)と呼ばれ、不死細胞として世界の研究者の手にわたることとなるものだった。
    その病理切片は同病院を子宮頸がんで受診したヘンリエッタ・ラックスさんのものだった。
    彼女はアメリカ・バージニア州のたばこ農家出身の黒人女性で、5人の子の母親でもあった。
    30歳の1951年1月に腹部にしこりが見つかり上記診断を受けたのだがすでに手遅れで、同年10月4日に31歳の若さでこの世を去ることとなった。
    HeLa細胞とは彼女の頭文字から付けられた名前だったのである。
    当時は、切除された組織や外科手術、治療・診断中に得られた材料は医師や医療研究所のものと考えられていたために、彼女やその家族に説明し、同意を得る必要がないとされていた。
    世界で初めて培養に成功したHeLa細胞は、こうして多くの研究者たちに提供され、本人はもとより、家族すら知らぬ間に世界中に広まっていったのである。
    ところで、それまで成功しなかったヒトの細胞の培養がなぜ突然に可能となったのだろうか。
    それは彼女の子宮頸がんの原因となったヒトパピローマウイルスの遺伝子の一部が、彼女の細胞の染色体に組み込まれ、寿命と分裂にかかわるスイッチに影響を与え、不死化させたことが要因だといわれている。
    なんと、彼女の命を奪った癌が不死細胞を作ったということである。
    私たちの染色体には末端にテロメアという部分がついている。
    そのテロメアの長さが細胞分裂するたびに徐々に短くなっていき、それがなくなったとき細胞も分裂できなくなり死を迎えるといわれている。
    そのため、通常は細胞分裂の回数が決められているのだが、HeLa細胞はこのテロメアが短くならず、旺盛に分裂を繰り返すことで不死の能力を得たのである。
    世界中に広まり、培養が繰り返されてきたHeLa細胞。
    その培養された総量はなんと5000トンを超えたという。
    人によっては5000万トンと報告する人もいる。
    おそらくどちらかの桁間違いだと思われるが、彼女の元の体を優に凌駕する量が培養されていることは紛れもない事実である。
    Hela細胞は癌研究や製薬などに役立てられた。
    核兵器による放射能の影響調査にも使用されたし、無重力での細胞増殖を調べるために宇宙にも行った。
    そのほかポリオワクチンの研究、化学療法、クローン作製、遺伝子マッピング、体外受精等々の研究にもこの細胞は貢献した。
    HeLa細胞は彼女を死に追いやったがん細胞だが、ここまで増殖し、人のために役立っているとは何とも皮肉な話である。
    これほどまでに世に大きく貢献したHeLa細胞だが、このようにヘンリエッタ・ラックスさんの細胞が広く使われていることを家族が知ったのは彼女の死後20年も経ってからのことで、偶然によるものだったという。
    彼女の細胞の培養に成功し、世界の研究者に提供された際は金銭的利益を求めず無償提供されたのだが、その後の研究で莫大な利益を生み出しており、ことは訴訟問題にまで発展した。
    それらにまつわる話はいずれご紹介していきたいと思う。
    それにしても、かくも奇妙でドラマチック、そして壮大な運命を細胞レベルでたどる人もいるのだねぇ。

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